HeartBreak One Run

走る。登る。回す。紡ぐ。

アワイチ(21年11月13~14日)

10月の末に久々に琵琶湖を一周した。少し時間はかかったけれどちゃんと完走。それをいいことに新しい旅がしたくなってしまった。同じような規模感でこれまで行ったことのないところ。そんでもって交通費が安くて済むところ。その結果、ビワイチに並ぶ関西チャリダーのメッカ「淡路島」に辿り着いた。通称アワイチ。総距離150km。私は自転車ではなくランニングで行く。

仕事終わり、鈍行に乗って美川から福井。福井から敦賀。敦賀から山科。そんでもって三ノ宮。三ノ宮の漫画喫茶で仮眠をとって、始発で明石。駅から徒歩5分程度で淡路島行フェリー『ジェノバライン』の乗り場に着く。チャリダーの方、釣り師の方。思ったより多くの人がこのフェリーで往来しているようだ。

朝7時。岩屋フェリー乗り場前から走り始めた。朝日が昇るのを横目に澄んだ空気の中を走る。とても気持ちがいい。今回の旅では必ず立ち寄るべきチェックポイントを用意していた。1つ目が洲本のドラゴンクエスト記念碑。2つ目が鳴門岬。3つ目が伊邪那岐神宮で、4つ目が絵島だ。実は絵島の場所を少し勘違いしていて、フェリー乗り場の西側にあるものだと思っていた。今回の旅は時計周りだから、最後に寄ることになると想像していたのだけど、実際はフェリー乗り場の真ん前にあった。

今回のシューズはasicsのGEL KAYANO。糸魚川の旅で足を少し痛めてリタイヤした苦い経験から、保護性の高い装備を選んだ。はじめは結構重くて足がバタついたけど、何カ月か履いているうちに気にならなくなった。ただ、初心者向けシューズと聞いてはいたけれど、その割にはソールの減りが速いような気がするのは私だけか? 特にミッド部分のゴムが薄くてすぐにすり減ってしまう。(逆にかかとのほうはとても分厚いのだけど)

少し走ったところで『伊邪那岐神社 あと7km』の看板を見つける。島外周を一周する私のコースだとあと100km以上はあるのだけれど、島を縦断してしまえばすぐそこ。そんな誘惑があるのは琵琶湖と違うところだ。

空は快晴ではあるけれど適度に雲は出ていて日射しを遮ってくれる。これは結構嬉しい。大勢のチャリダーに交じってランナーにもたまに遭遇する。浦を過ぎたあたり、大仏モニュメントのあたりでは10人弱のチームとすれ違う。気温もちょうどいいし紅葉で景色もいい。確かにこの時期はランニングのベストシーズンだ。スタート地点から洲本までの30kmと少し。概ね海岸に沿って平坦な道が続いていて、イージーな気分で進める。

洲本はもともと鐘紡(カネボウ)の紡績工場があったところで、この工場は昭和61年まで創業していたそうだ。瀟洒なレンガ造りの建物をそのまま利用した広い公園の中に突然草木で囲まれた小さなサークルがあり、ドラゴンクエスト記念碑はその中にあった。製作者の出身地が洲本だとのこと。大きな公園の中でも一番といっていいほどの目玉モニュメントのようで、ひっきりなしに観光客が写真を撮りに来ていた。この時点で当初予定から30分ほどの遅れ。あんまりゆっくりはしていられないので、近くのファミマでおにぎりを買って簡単な昼食。

そこから数キロ先の由良。ここから先は40km進んだところの福良までコンビニが無いと各種レビューで見ていた。食糧は十分背負ってはいるけれど、飲み物はどうなんだろうか? 不安に思い1リットルほどをリュックに詰めておく。が、結論を言えば自動販売機はそこそこ道中にあったので、無駄な重量を負ってしまうことになった。

ここから先、福良までに3つの上り。1つ目の区間では一時スマホの電波が途絶えた。この夏は結構頻繁に山に通っていたから、ロードの上り(しかも100m程度)なんてどうってことは無い。辟易したのはゴミの多さだ。テレビや冷蔵庫。傾斜の影に隠すように粗大ごみが延々と捨てられている。神さまが泣くぜ。峠を越えた後、海沿いを歩いていると1台の車が声をかけてくれた。「このまだ街まで長いけど、大丈夫?」 有難い。でも全然大丈夫っす。

このあたりにある諭鶴羽山は淡路島の最高峰。とはいっても標高608m。今回はあまり意識はしなかったけれど、淡路島南部は中央構造線の通り道。フォッサマグナロードも完遂できていない今言うことじゃないけれど、この構造線もいつかは辿ってみたいなぁと思ってみたりもする。

福良の道の駅に着いたのはちょうど19時頃。ここでちょうどオンスケに戻った。別に急いだからではなく、ここまでの区間の想定時間をだいぶ広くとっていたからだ。ローソンでから揚げ弁当とカップ焼きそば(ぶぶかの油そば)を買う。おろしポン酢のソースとわかめご飯のお弁当は10年ほど前に同じやつをファミマで食べたな、と思い出した。当時に比べてから揚げの質が良くなっているのは、きっと時代の進化なんだろう。とにかくがっつり食べて腹を満たした。眠くなったらそのままどこかで寝てもいいと思っていた。

が、意外と普通に歩けてしまい、4つ目の峠を難なく超えて道の駅「うずしお」へ。夜で渦潮は見れなかったけれど、綺麗な徳島大橋の景色を楽しんだ。スマホで写真を撮ろうとしたところ、カメラが起動しない。本体再起動も何かトロトロしていて不審な感じで焦ったが、しばらく待つと復旧した。少し前からスマホはiPhone SE(第2世代)からXperia SO-41Bに乗り換えた。まずバッテリーの持ちが全然違うこと。iPhoneでRajikoを付けていると5時間ぐらいしか持たないのに対して、Xperiaは1.5日ぐらいはいける。イヤホンジャックの有無もでかい。Lightningケーブルが不便。結局、サブのスマホも色違いの SO-41Bにして、同機種2台持ち体制とした。さらに本体価格がめっちゃ安い。Amazon中古で13,500円くらい。ありがとう、Sony。起動に少し時間がかかることを除けばサイコーだぜ。

ここから湊地区に向かって進んでいたところ、向かいからランナーの集団が現れる。人数的に、午前中にすれ違った人たちかもしれないな、と思った。わちゃわちゃ元気のよい声にこちらも力をもらい、ここから先残り50kmの道のりを進んだ。アワイチには5km毎に反射板のボードが設置されていて、夜はライトの光を反射してとても目立つ。それを見つけるのを楽しみに、ラジオの声を頼りに黙々と歩いた。やっぱり夜はちょっと走りたくない。

当初の予定では、99km地点の公園で朝まで仮眠するつもりだった。が、そうするとゴールの時間がだいぶ遅くなってしまう。帰りも鈍行を使うことを考えると、なるべく早い便で帰りたい。となれば、睡眠時間を削って歩くしかないわけで、結局この日は120kmほど歩くことになった。さすがにもう限界というところで道路沿いの植え込みに影を見つけ、そこに隠れるような形で寝袋に入った。気温は10℃を下回っていただろうけど、シュラフ+カバーでそこそこ快適だった。1時間ほどで目が覚めた。少しまどろんでいると、車が近くに止まる音が聞こえた。やばい、バレたか? なるべく影のところに体を寄せて潜めていると、少し時間をおいて車は去っていった。別に犯罪してるわけじゃないんだけどね。やっぱり夜に人とエンカウントするのは緊張する。

結局未明3時過ぎごろから2日目の旅を開始。ひたすら歩く。6時少し前に再び眠気が襲ってきて、再び道の傍らで30分ほど仮眠をとる。これぐらいの時間になるとだいぶ車も増えてくる。徐々に明るくなっていく空。できればこのままこの調子で進みたい。そうすれば、きっとお昼前にゴールできる。ひたすら続く海沿いの道は県道31号線。淡路サンセットラインの愛称が付けられている。残念ながら夕日をここで見る予定はない。

伊邪那岐神宮に着いたのは朝7時ごろ。サンセットラインから神社に続く道には日本の神々を紹介するモニュメントが一定間隔で並んでいて、見覚えのない漢字が長々と続く名前と、それに対してとっても簡略な説明を読みながら、だいたい1km程度歩いただろうか。神宮を名乗るわりには境内はそれほど広いわけではなく、それでも綺麗に整えられていた。適当に手を合わせておみくじを引いて、「吉」。まぁそんなもんだ。小さなリーフレットも頂き、帰りの電車の中で読もうとリュックの奥に押し込んだ。日本神話は難しい。名前は覚えづらいし、登場人物の関係性もややこしい。古事記、日本書記。そこに書かれているのは歴史か、物語か。後者であれば、何を伝えるものなのか。その背景や意図。いろんなことがこんがらがって、手がつけられなくなる。だからこそ、文字の無い縄文時代の歴史のほうが私は好きなんだと思う。

道のりは残り30km。近くのローソンで朝ごはんを食べて、ラストスパートだ。途中、線香の匂い漂う集落があったり、幸せのパンケーキなるお店を見つけたり。(なんと第7駐車場まであるようだ)でっかいハローキティ。ところどころ写真には収めたけれど、なんだかもうどうても良くなっていて、とにかく早くお風呂に入りたい一心で走った。GEL KAYANOが奏功したのか、琵琶湖を走った時ほどの足の疲れはない。十分走れる。5km毎に看板だけを写真に納めながら、少しずつ近づいていく。

130km、135km。140km。145kmの看板を過ぎたあたりで、正面の峠の裏に明石大橋の支柱が見えた。そしてここから、走るのを止めた。安心したから、というのと、この近くに温泉があると知っていたからだ。実は明石のフェリー乗り場で100円引きのクーポンをGetしているのは「美湯松帆の郷」。若干きつめの上り坂を経て、11時頃、30時間近くにわたる旅の疲れを癒した。とはいってもあまりゆっくりはできない。できれば12時半のフェリーに乗って帰りたい。せっかくの晴天。露天から見る明石大橋の瀬戸内海の絶景を惜しみながら、30分で出発した。当初ゴールは岩屋港だと思っていたけれど、岩屋港からフェリー乗り場までもそれなりに距離はあって、だいぶギリギリの時間までかかってしまった。急いでチケットを買ったものの、フェリーがいない。次の出発は13時だそうだ。急いで損した気分だ。タコ、食べたかったのに。

しばらくぶりに普通の旅行気分も味わいながら、ランニングも楽しめた。なんとなく、東海道の旅に似たような気分になった。GWの四国の旅(要リベンジ)にも少し近い。ただのチャレンジではなく、次に見られる景色にワクワクしながら進む道。次はどこに行こうかな、って。

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テーマの著者 Anders Norén