HeartBreak One Run

走る。登る。回す。紡ぐ。

京都一周トレイル

■期間 2022年3月19日(土)~20日(日)
■距離 101km(JR京都駅~伏見桃山~上桂~JR京都駅)

きっとこれが最後のまん延防止措置。なるべく人が少ない今だからこそ、京都に行こう。今回は重装備。

装備

カリマーのCouger70-95をメーンザックとした重量級装備で歩くことにした。行動の快適さは荷物の重量だけで決まるものではないことを年末年始の熊野詣で実感していた。それに、しばらく埃をかぶっていた一眼レフを使ってみたかったのと、昨年購入してから冬の通勤にしか使っていないトレッキングシューズを試してみたかったから。カメラ(SONYのα6000)には遠近両用レンズをセット。PaaGoの防水カメラバッグに入れ、ザックのサイドポケットの上に括り付けた。これが絶妙で、ストレスなくカメラを出し入れしつつサイドポケットも生かすことができた。

前日の18日、終業後電車に飛び乗る。コロナ期間中ずっとガラガラだったサンダーバード。この日は打って変わって満員御礼で、結局小松から京都まで席に座ることはできなかった。駅北徒歩5分のリブマックスで宿泊した。まん防期間中だから21時頃でも京都の街はだいぶ静かで、京都タワーの光がとても目立っていた。

1日目(JR京都駅~伏見桃山~比叡~仰木峠)

京都一周トレイルは伏見桃山駅から始まり、上桂駅に終わる。スタートとエンドが異なることから実は京都を「一周」しているわけではなく、これではちょっと面白くないから、私の一周トレイルは京都駅をスタートとした。1時間半ほど歩いて伏見桃山駅。すぐ近くの御香宮神社にさっそく寄り道をする。日本名水百選の「石井の御香水」が目的だ。2リットルのハイドレーションパックいっぱいに入れて、20kg近くなったザックを背負う。

ネットの情報ではあちこちに道標があって迷うことは無いと書かれていて、確かに道標はとても参考にはなったけど、結局ルート探索には相当苦労した。もちろん公式マップと昨年発行されたガイドブックも併用していたが、いずれも地形図に似せてはいるものの厳密にいえば概念図で、道の分岐や目印となる建築物の記載が結構省略されていた。特に市街地ではルートが分かりづらく、Googleマップを多用した。また、公式マップは縮尺率が大きいのとコースタイムの記載がなく使いづらい。序盤はがんばって見ていたものの、蹴上のあたりからはガイドブックしか使わなくなった。ガイドブックさえあればマップは不要だと思うが、このお金はトレイル維持費に使われるとのことだから、無駄遣いした気持ちにはならない。ちなみにトレイル区間はガイドブックと道標で概ねいけた。

はじめはマップがそんなことになっていることに気付かず、まず伏見稲荷公園の出口でロスト。次は泉涌寺でコースミスした。東山山頂公園から先でもコースミスで知恩院に出てしまう。蹴上のあたりはよく歩いているから馴染み深く、それでも琵琶湖疎水の存在はこれまで知らなかった。日向大神宮のあたりでようやくトレイルらしくなってきたけれど、哲学の道に抜けるとそこで再び迷う。ちらつく小雨も若干強くなってきて、ウェーイ気分の若者を横目にイライラしながら先へと進む。結局のところ、東山区間は見どころは多いのだろうけれどその分観光客が多く、ロングトレイルならではの静謐とした雰囲気を感じる道ではなかった。ただ、伏見稲荷大社の朱はやっぱり綺麗で、一眼レフが大活躍した。(後から見るとピントが全然合ってなかったけど)

京都駅からトレッキングシューズを履いていたものの、22kmを歩いたところで右足くるぶしの痛みが強くなってしまい、鳥部の森の入り口で予備のトレランシューズに履き替えた。昨年1年間ヘビーユーズのMontrailのカルドラド。せっかく見つけたお気に入りシューズだったのに、もしかして今シーズンで絶版かもしれない。トレランシューズのソールの柔らかさは確かに足裏アーチに優しくないけど、かなり歩きやすくなった。

日本バプテスト病院を左手に、白川、一条寺、修学院、比叡と続くトレイル区間に入っていく。ケーブル比叡駅に着いたあたりで午後5時半。当初の予定より1時間以上遅れていた。翌日の夕方に別の予定を入れていたので、夜行覚悟で歩いていく。延暦寺の境内をさらっと通り抜け、千日回峰行のルートでもある木々に囲まれた稜線を進む。すでに日は完全に落ちていて明かりは無い。それでも道はほとんど一本なので十分わかる。ヘッドライトはLEDLENSERのMH5。マグネット充電がとても便利で、慣れてしまうと使い捨て乾電池には戻れない。光を集約できる独自機能のおかげで20ルーメンでだいたい歩くことができた。サブライトはcateyeのVOLT 400。これもホントはLEDLENSERの充電式ハンドライトに変更したいのだけど、お金がね。。。

予定していたキャンプポイント、仰木峠に到着したのは20時半ごろ。ちょうど雨が少し強くなってきていたので急いでテントを設営する。finetrackのカミナドーム2。ペグは打たずにグロメットに固定するだけのなんちゃって設営で、地面には優しいけれど耐寒性能はちょっとイマイチ。それでもテントはこれまでのツエルト泊に比べればとても快適だ。外の雨も風も全く気にならず、荷物を適当にばらまいても十分足を伸ばして横になれる。何より背を曲げずに普通に座れる天井の高さがとても良いのだ。これらは全てツエルト2ロングでは我慢していたこと。荷物は1kg近く重くなってしまうけれど、モトは十分とれていると思う。あとは、もうちょっと暖かいシュラフが欲しいかなぁ。(お金がっっっ)

夜景撮影、もっと練習しよう!

2日目(仰木峠~大原~鞍馬~嵐山~上桂~京都駅)

もともとは5時頃出発するつもりだったけど、初日の遅れから考えて早めに出ないとまずいと判断。寒くてあまり寝付けそうにもなかったし、3時ちょうどに出発した。改めてトレッキングシューズを履いて歩いたところ、100mも進まず痛みが再発。結局トレランシューズに戻した。若干気になっていたのは補給食が足りないということ。もともとどこかにコンビニがあると思っていたのであまり用意していなかった。大原の集落に降りたものの、補給できるようなところは見えない。探すのも面倒だったので、まぁなんとかなるだろうと先へと進んだ。

江文神社のあたりでロスト。鳥居はあれど神社は結局どこにあったのか。さらに江文峠でバイパス道路を横断するところでも道を誤り、道路を渡らず急登を少し進んでしまう。踏み後もしっかりあったので、結構迷う人いるんじゃないだろうか。薬王坂の手前で夜明けを迎え、明るさとともに気分が良くなった状態で鞍馬に抜ける。お寺の門前に立つものの、案内板を見ると本堂まではだいぶ登るようで、立派な門だけ写真を撮って先に進む。近年続く大雨の影響か、山のスギの多くが伐採されていて、傾斜に白い切り株が無数に生える絵が少し不思議だった。

ここからしばらくはコンクリの道。鞍馬街道は迷いようがない一本道で、朝ごはん代わりに残りの行動食を全部食べてしまう。あとはもう、なるようになれ、だ。向山から盗人谷。城山のあたりでは中学生か高校生ぐらいのグループとすれ違う。登山部だろうか、みんな大型ザックで元気よく歩いていた。(と思ったら、氷室口のあたりで力尽きている子もいたりした。)

2日目の北山ルートはトレイルがメーンで人がいない分、道に迷うことが少なくて歩きやすい。急登も少ないからペースを落とさずに歩くことができた。沢ノ池で食事を取りたかったけれど、雨が降っては止み降っては止みの繰り返しで、ちょうどいいタイミングを見つけられない。結局沢ノ池はスルーし、仏栗峠も通過。福ケ谷林道に出たあたりでようやく晴れたので、ここぞとばかりに道端で料理を始めた。するとそのタイミングを待っていたかのようにトレランの人たちが大勢やってきて、じろじろ見られるのが少し恥ずかしかった。それでもラーメン1.5人前にカップ飯2食分を食べ、元気回復。結局そのカロリーでゴールまで歩き切ることになった。林道を下りながら傍の川を見ていると、水中に銀色の細長いものが見えた。産卵を終えた川魚が力尽きたのだろうか。(産卵の時期か?)その近くにはちゃんと生きているやつが泳いでいるのも見つけた。

林道を抜けると高雄。ここから再び観光地に入る。清滝川に沿って錦雲渓(きんうんけい)なる景勝地を歩く。ここで当初のスケジュールを見てみると、なんと2時間半も前倒しに進めていた。このままいけば夕方の予定にも間に合う! 勝った! と気分が上がり、調子に乗って川沿いの岩に乗って遊んでいると滑って腕を擦りむきお尻を強く打ってしまう。山では転ばなかったのに、、、痛い。若干の悶絶の後、それでも気分の高揚は収まらず、ウキウキ気分でゴールに向かう。

落合のあたりでロスト。ロストももう慣れっこになっていたけれど、そこからロードの坂道を上がり、そのまま何の気なしにロードを下っていると、直前の標識を見落としているのに気づく。どうもトレイル道があるようで、そこを辿るのが正規の道のようだ(とその時は思ってしまった)。少し迷ったけれど道を戻り、六丁峠の標識⑥を見つけてトレイルに入り込んだ。すると現れたのは、錆びて支柱の無くなった橋に急傾斜。そこら中に不自然な踏み跡が伸びている。滑落すれば命はないだろうし、大きなザックを背負っている以上そのリスクは結構大きい。残念だけどこの道は進めないと引き返し、結局先ほど歩いたロードを下った。するとその先で再び標識⑦を見つけ、実はトレイルこそが誤りの道だったことに気付いた。

六丁峠⑥は峠の最高地点から30m手前の谷側にあり、小倉山へと続く山道(急斜面のトラバースが続き危険)との分岐である。車道の情報を横断している嵐山高須パークウェイの橋を潜ると、鳥居本までは800mの距離だ。

京都一周トレイル マップ&ガイド(京都トレイルガイド協会 編著

私の読解力の問題なのかもしれないけれど、例えばこの文面を「山道は危険なので入らず、車道をそのまま下る」と書けばいいのに、一周トレイルと関係ない小倉山とかの情報を入れるから紛らわしくなるんだと思う。本当に危険な道だから、ここの表記はなんとかするか、トレイルに明示的に看板とかを立てておいたほうがいいのにと思った。結果、ここで30分ほど余計な時間を使ってしまった。

もやもやした気持ちを引きずって嵐山へ。「竹林の小径」は確かに圧巻だったけど、観光客が多くてちゃんと写真を撮れず、公園を抜けて渡月橋へと向かう。ショッピングセンターや映画館があるわけでもないのに、このあたりはやたらめったら人が多い。ただ、それも阪急嵐山駅を過ぎるまでの話。最後のトレイルである松尾山。市街地では仕舞っていたトレッキングポールをセットし、残りの力を振り絞って一気に上がる。タイムを短縮するにはトレイルを急ぐのが一番なのだ。案外あっさりと山頂に着き、けれども人目があったのでさっとスマホで写真を撮るだけにした。後は下り道。上りはあっさり終わったのに下りが意外と距離がある気がして。それでもやっぱり終わりは来る。西芳寺(苔寺)の前を通り過ぎ、やっぱり正規ルートを見失って上桂駅まではGoogleマップを使った。16時半に到着。駅前ではやんちゃそうな若者が陣取っていたので長居はできず、そのままJR京都駅に向かって7キロ弱を歩いた。

JR京都駅は大変な混雑で、551蓬莱の前には長蛇の列が出来ていた。前回来たときもそうだったけど、京都駅はJRの改札がどこにあるのかとても分かりづらい。すごい人ごみで歩き辛い。結局その後の予定には15分だけ遅れた。

ランニングから登山に入ると、荷物は軽いほうがいいと思ってしまいがちだ。特に最近はULの流行が凄まじく、大型ザックは時代遅れに感じられるかもしれない。けれども、腰荷重の大型ザックにはULとはまた違った魅力がある。それは肩の痛みからの解放であったり、虫や雨の侵入からの解放であったり、水切れの心配は無いし、食事も美味い。一眼レフで撮る写真はスマホとは比べようがないくらい綺麗だし、数キロ程度の重量が増えたところでたいして気にならないのが大型ザックだ。それに、20kgぐらい背負ったとしても、1日40キロ程度は歩くことが出来ると今回証明できた。本来自分を自由にするはずの”Ultra Light”にいつの間にかがんじがらめにされていた自分に気付けた熊野伊勢路の旅。そして今回の旅で山行の楽しみがもっともっと広がった。

帰りのJR湖西線から見る比良山にはほとんど雪は残っていなくて、もう2週間もすれば縦走できそうだ。高島トレイルはもうちょっと時間が必要だろう。再びあの道を歩けるころには、新しい私の旅のスタイルを見つけたいなと思っている。

© 2024 HeartBreak One Run

テーマの著者 Anders Norén