3月20日の朝6時半。
十分な睡眠の上、TCR ADVANCED2に乗り、美川の自宅を出発した。
何度か来ている福井県三国港までは最短ルートで。ただ、そこから先は未知の世界だ。
三国から敦賀に向かう道は2つある。
まずは8号線。これは福井市を経由し、琵琶湖東側まで一直線につながる道だ。
一方、海沿いを走るのが305号線。距離は8号線より多少伸びるが、平地続きで舗装状態も良い。
下ハンドルでぶっ飛ばす。
馴染みの美容師が305号線周辺出身ということもあり、まずは海沿いを行く。
小雨が時折ちらつくものの、風はそれほど強くない。
自販機は多く、ちらほらとカフェもある。ただ、コンビニはない。
このでっぱりの最西端にある越前岬。灯台がある。山を登る必要があったのでスルーした。
そこから少し行くと、越前町の道の駅。ここでちょうど100キロだった。
思ったりも敦賀が遠い。
途中、カニを出す料理屋が多数。カニを食べない私にはあまり縁がない。
敦賀の街並みは面白い。道路が広く、両端に商店街が並ぶ。
その商店街の前の道路にパーキングスペースがずらっと並び、
それが横止めではなく縦に止める形式のものだった。
町全体に滲み出るリッチ感は原発に依存したものだろう。
悪気はなく、私の生まれ育った町と同じだ。
将来何万年後の放射能被害を恐れるか。
けど、産業振興できずに廃村となってしまえば、それを恐れる人すらいなくなる。
ローソンでおにぎりをいくつか買う。昼ごはんだ。100円セールで安かった。
私にはこんな程度の食事がちょうどいい。
少しの海沿いの道を過ぎ、161号線。西近江路。ここから厳しめの上り坂だ。
体重が重い私は坂が大嫌いだ。どれくらい嫌いかも言いたくないくらい嫌いだ。
けど、ここを登り切ると、滋賀県に入れる。感動して写真を1枚撮った。
が、国境高原スノーパークの崩壊具合に悲しくなる。
こんな低い山、温暖化の今だともう雪は無いんだろうな。
(だからこうして3月に自転車乗りがいる)
そしてついに、琵琶湖が見える。でもそれはまだゴールじゃない。
ここから1周が始まる。
この時点ではまだ、20日時点の目標値は大津だった。
そして、帰路があれほど困難になるものとは思ってもいなかった。
だけど、400キロ超のロングライドはこんなにもきつく、楽しいのか。
それを知ることになった。
この旅で最も記憶に残っているのは、大津の港公園のようなところで、
チェーンに油を刺しながら、これから味わう苦しさのことを何処か他人事のように感じていたこと。
琵琶湖には噴水が上がり、結婚式だろうか。単発の花火があがっていた。
琵琶湖南岸近く。残る距離は200キロ+αくらい。
多少、足は残っていた。
ここで一晩泊まれば、翌日ははまぁ帰られるだろうな。
当初はこの時点で足はほとんど残っていなくて、泊まらざるを得ない状況を想定していた。
けど、そうはいかなかった。まだ足が回せた。
それならば。
このまま進むべきではないのか? 挑戦なんだろう? この旅は。
それを”挑戦”というものには、前に進むべきだと思った。
200キロ強を回す足は、とはいえ残っていない。
だから途中で、後悔するだろうな。なんで休まなかったんだって。
そう思ってしまった以上、まずやるべきことは、これからに備えた注油だった。
とても怖かったので、普段のメンテの倍くらいの油を使ってしまった。効果は変わらないのに。
そして、フレームに跨った。夜19時半くらい?
国道8号線が分からずに紆余曲折したこと。
深夜に各種機器の電源が切れ始めたこと。
安土城近くだったか。突然目の前を横切った何か大きな動物。
背後から爆音で迫るトラックの恐怖。
越前町の山奥で心が折れて、バス停の中で震えた1時間。
お尻の皮が破れていたこと。
足が重くてついにペダルを回せなくなったこと。
すべてがあの時の公園での決断をトリガーにして起こったことだ。
そして僕は、自らの決断を元に起こった数々のトラブルを乗り越えて。
スタートから28時間後、想定よりも時間がかかってしまったけれど。
自宅にたどり着いた。たどり着くことができた。
だから、僕はあの時にあの決断を下せた自分を誇りに思いたい。
走行距離:460.27km(但し、一部区間で電池切れのため計測出来ず)
走行時間:27.02時間(〃)
食事:
カロリーメイト4箱(1,600kcal)
すき屋牛丼メガ盛り(1,100kcal)
おにぎり8個(1,600kcal)
菓子パン3個(1,200kcal)
かつ屋ロースかつ定食(800kcal)
その他菓子類・ドリンク(1,500kcal)※ざっくり計算
全7,800kcal
消費カロリー:15,101kcal