HeartBreak One Run

走る。登る。回す。紡ぐ。

白山チャレンジ(自転車→登山→自転車)

手取川の源だ。
僕が今走る道は最終的にはこの山にたどり着く。
例えば富士山であれば、御殿場や河口湖といった近くから見たほうが綺麗なのだが、
白山の場合、その最高峰の御前峰はほかのさまざまな山に囲まれてしまい、あまりぱっとしない。
その姿を拝みたいなら、室堂まで登るか、
もしくは、手取川の河口付近から見たほうがいい。
離れてみれば、”白峰”の壮大さが際立ってくる。
2015年11月の日曜日。
土曜日の仕事を終えて夕方には眠りについた。
その1週間前にはすずのウルトラマラソンを走っていたものの、あまり体にダメージは残っていなかった。
(相当ゆっくり走ったしね)
だから、いけるんじゃないかと思った。これはリベンジだ。
REVOLTの修理は終わっていた。機材の準備はできている。
このチャレンジは、実はその1カ月前に試みていたもので、その時は手取湖の端についたところでペダルがもげてしまい、リタイヤを余儀なくされた。
今度はいけるだろうか? 手取川の河口から白山の山頂を目指す冒険。
自転車とランでつなぐ道。約150キロ。
深夜2時。REVOLTに乗って川を上る。ランニングとは違って、夜の自転車はスピードが出ない。
というか出せない。ライトをつけているとはいえ、何が出てくるかわからないし。
”愛笑む”を聞きながら、旧鳥越村の夜空を堪能する。
いいだろう?周りの音がちゃんと聞こえるようにすれば、音楽を聴いていても。
とりあえず、その間誰一人ともすれ違うことはなかったから、誰からもクレームをつけられることはなかった。

白峰と僕が呼んでいるのは、手取湖を過ぎたところにある、白山までの道のりにある最後の集落。
なんでこんなところに人が住んでいるんだろう?
その疑問には最近ローカルテレビの番組が答えてくれた。
山奥の寒さが養蚕に適していたのだそうな。
仕事があれば、人はこんな山奥にも住んでしまう。
働くということは、生きるということに密接に関わっている。
幾つかの温泉を示す看板を横目に、山に入っていく。
お尻が痛い痛い。サドルの調整がどうもよくない。
朝のまぶしさの中で、緑に澄んだ川の色が綺麗だ。けど、そんなことよりも眠い。
5時間くらいかけて、ようやく市ノ瀬駐車場に到着する。
ここから先は急坂で今の体力(とお尻)では登れそうになく、
駐車場にREVOLTはおいていく。ここからは足で行こう。

1時間ほど頑張って走ったところで、蛇行し始める。前に歩けなくなる。
眠くて眠くて仕方がないから、少し山の中に入って仮眠をとった。30分くらい?
道路にはたまに車が来ていたから、人目につかない窪地で丸くなった。
目が覚めて、少し心が楽になって。
さぁ行こうと思ったら、すぐ1キロ先が別当出合。
もうちょっとがんばれば、ちゃんとしたところで休憩できた。

まだつり橋には板がついていて、砂防新道に進むことができた。
雪がつもる季節になると、このつり橋は封鎖される。
鼓動が早い。息が切れる。
やっぱりまだきつい。

甚之助避難小屋のあたりから道の袖に雪が見え始める。
黒ボコ岩手前の一番嫌いなポイントにも雪が積もっていて、勇気を振り絞って渡る。
僕以外にも歩く人はいて、彼らはそこまで怖がってはいないようだった。
慣れが必要なんだろうか?いつか慣れることができるだろうか?
山は好きだけど、高いところはとても怖い。
この日の弥陀ヶ原には軽いガスがかかっていて、けどそれはそれで綺麗だ。
室堂から先は完全に雪が積もっていた。
だから、ここでこの日の歩みは止めることにした。
もう一度来よう。次は御前峰へ。その次は、全行程をランのみで。
ほとんど誰とも話すことがなく、ただペダルをこいで、フラフラしながら山を登る。
帰り道には今日のことを思い出そうとして、意外と何も思い出せなくて、
けど、頑張ったなぁ、という実感だけはある。
たったそれだけを得るために費やした膨大なエネルギー。時間。
もう一度貯めて、もう一度冒険に行こう。

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テーマの著者 Anders Norén