HeartBreak One Run

走る。登る。回す。紡ぐ。

高島トレイル(20年5月)

コロナのおかげで仕事が暇になり、週休4日になった。こんなチャンスは一生無いってことに気付いた。

5月23日(土)

前日は18時に夕食。風邪薬を4錠飲んで寝室のカーテンを閉めて横になるとぐっすり眠れた。深夜に出発。福井滋賀県境の秘境駅JR新疋田の大型駐車場を使わせて頂く。
この駅はてっちゃんに愛されていて、木造の無人駅にはちょっと私には何がいいのか分からない鉄道の写真がいっぱい貼られていた。写真の良否はともかく、その風情はとても素敵だった。

深夜2時の国道161号線は大型トラックの世界。びゅんびゅん飛ばすのが怖い。けど運ちゃんにしたらこんな時間に歩いている私のほうが怖い。3時過ぎにスタート地点の国境スキー場に到着。夜明けまで仮眠することにした。
4時半ごろ目が覚めた。意外としっかり寝れて元気いっぱい。登山届を出して出発した。

失敗の原因は道迷い

予定では2日間のスルーハイク。標準タイムの0.6掛けでギリギリ実現できる計画だったが、結果を言えば失敗し、週を跨いでのセクションハイクに切り替えた。
一番やらかしたのは粟柄越での道間違い。直前の赤坂山からは鉄塔に沿って稜線に延びる道が明らかに見えるのに、マキノスキー場に下ってしまった。明らかに長い下りといつの間にか高島トレイルの標識テープを見なくなったことに違和感を感じたのはその道を進んで30分後。地形から誤りと判断して粟柄越までに戻るまでに1時間のロスをしてしまった。

もう1つは近江坂。ここの標識に書かれた矢印が一部欠損しており、下山路しか示していなかった。直前の抜土から道を見失うことが多くなり、徐々に遅れが広がっていた。その焦りからこの時に限って地図での確認を怠り、標識の矢印に沿って進んだ。(矢印にはビラデスト今津と書かれていたがその意味も確認しなかった) 10分ほど進んだ後、やはり標識が見当たらないことから誤りに気付いた。以降ずっと、地図を見てからテープを探し、見つけたテープに向かって歩く。道を見失ったら直前のテープまで戻り、そこから目をこらして道を探る。この方法を取ることになり(取らざるを得ず)スピードを出せなくなった。

思い返せばこれまでの登山は稜線歩きが中心で、分岐の数は限られていた。よっぽどのことが無い限り間違えない。これに対して高島トレイルは、森林内の平地部分を歩くことが多く、道がそこまで明らかにはなっていない。

結果、武奈ケ獄到着時点で予定より2時間以上の遅れ。日没までの時間を考慮して、その日の宿泊地を水坂峠に決めた。(本当は桜峠までいくつもりだった)赤岩山西峰以降の険しい杉林に怒りをぶつけながらも、そういえば獅子吼の板尾方面の道も然りで何故杉林はこんな急傾斜な場所に作られるのだろうと不思議に思った。

セクションハイクへ

水坂峠でfinetrackツエルトⅡロング(モスグリーン)を張り、幕営開始。もともとtokyobaseで紹介されて気になり2年ほど前に購入したものの、耐久速攻登山ばかりの当時は少し大きすぎてずっと放置していたものだ。数時間の仮眠だけならストックシェルターだけど、料理をして夜をちゃんと越えるためにはツエルトⅡロングの広さはやっぱり必要だ。(なお、こいつの本気を出すにはMont-bellのツェルトインナーポールは必須だ)
ただ残念ながらペグを全部家に置き忘れてきたという不始末。それでも焦らず、近くにあった石を使って危なげなく設置完了。今回の旅に投入するために、自粛期間中何度も手取川の河口で設営の練習を繰り返したおかげだ。

食事はいつも恒例のカレー飯とQTTAのコンビ。私のガスコンロ「JetBoil」が1回で沸かせるお湯の量が500ml。カレー飯とQTTA、必要とするお湯の量が併せてちょうど500mlというのが良い。あと旨い。

お腹を満たした後、これからの予定を考えた。足にはマメが結構できていてスピードアップは難しい。そもそもの予定がかなりキツキツで、道迷い一発で大きく狂ってしまうのは痛いほど経験したこと。このまま2日目を進めてもよいものなのか。道迷いの恐れから夜間行動は考えられない。例えば2日目も少し遅れてもう1日必要になった場合、行動食が不足する。
最終的に水坂峠での一時中断(エスケープ)を決意したのは、ここからJR近江今津駅が意外と近い(約12km)ということだった。ここから先は高島の奥地に踏み込むことになり、人里へのエスケープはできるもののそこからJR駅までのルートをつなぐのは非常に難しい。(たまにしか来ないコミュニティバス頼みになる)
それならば、来週もう一来よう。
今度はJR近江今津駅からスタートすればいい。
そうと決まれば、とりあえず朝までゆっくり休もう。記憶にある限り20時ごろ就寝。24時頃一瞬目が覚めたもののすぐ二度寝した。翌4時ごろ、薄明るくなってきたので朝食(本当は2日目のディナー予定だったハヤシ飯+QTTA)を取る。
ゆっくり荷物を片付けて、駅に向かって歩き始めた。

行動食について

今回用意していた行動食はBALANCE PAWER(味の多彩なカロリーメイトもどき)と大量の安いサラミ。これらは日帰り登山で行動食にしているものだ。これに加えて落花生とベビースターラーメンのトレイルミックス。結局食べたのはトレイルミックスばかりで、ロングトレイルと日帰りで行動食の考え方は違うのだと分かった。(ロングはちびちび一口ずつ食べるほうがいい)
今後何をミックスするのがいいのか考える、新しい楽しみが見つかった。

ロングトレイル

あくまで2日で突っ切る予定だったので、敢えて愛用のOsprey「Kestrel 28L」は導入しなかった。代わりにRaid Lightの30Lバックパック(日本未発売)にSalomonのチェストバッグを取り付けて、前面コクピットを増強した。ここに電子機器(スマホ)やら行動食やらを詰め込んだ・・・が、重い。バックパックのチェストベルトもうまく機能を発揮できず、結局肩に負担がかかりまくってしまった。自炊グッズ(カップ麺とかJetBoilとか)を持って複数日移動するなら、大人しくKestrelを使ったほうがいいと思った。

私の旅は山歩きだけでなく、山にたどり着くまでのロードも含めて考えている。だからどうしても走れるスタイルでなければならなくて、登山靴ではなくトレランシューズ。なるべく装備は軽いUL(ウルトラライト)志向になるのは当然の流れだ。
けれども、絶対に落とせないポイントは耐久性と安全性。ストックシェルターではなくツエルトⅡロングであることもそうだし、200gを切るようなレインウエアは信じない。繊維は細くなればなるほど軽いが強度は落ちる。透湿防水膜は薄ければ薄いほど軽いが製品寿命が短い。(薄い透湿防水膜はPU(ポリウレタン)製。ゴアのようなPTFEは作り方の都合上、薄膜化は無理なんじゃないかと思っている)
サポートのあるレースであればともかく、ロングハイク(私の旅)は独りでやり遂げることが前提だ。エスケープしてから生還するまでの道も含まれている。

後半戦に向けての準備

まずは計画を見直した。0.6掛けの予定タイムを0.7にしてみた。これが面白いことに、前半戦のタイム実績とぴったり重なる。道迷いのタイムロスも踏まえれば、今の私の実力はこれくらいだと認識した。(稜線歩きだと0.5~0.6)
これでスケジュールを組むと、地蔵峠あたりが後半戦初日の宿泊地になりそうだ。2日目の午前中には終点までたどり着きそうだから、その後比良山系にもちょっと寄り道できないか検討できそうだ。

バックパックは結局OspreyのKestrel 38Lを使うことにした。28Lと比べてもほとんど重量差がないことと、カップ食をそのまま大量に入れられることが一番のメリットだ。行動食をトレイルミックスメーンで考えることで、前室コクピットは不要になった。ハイドレーションパックを使うことで500mlペットを何個も付ける必要もなくなる。

思えば私の登山はほとんど白山ばかりで、知った山域を歩いてばかりだった。それはそれで楽しいのだけれども、初めて歩く道の緊張感もまた不思議な心地よさがある。新しい発見もあれば初めてならではの失敗もある。その記録をちゃんとつけて反省することで、次にまた新たな道(例えば信越トレイルとか)に進む時の基準になってくれる。見えない道に一歩踏み出すための力なんだろうと思う。

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テーマの著者 Anders Norén